彼はゴリラか人間か?
「ねえ、君の名はゴリ男(ごりお)って言うんだよね?」
「そうだよ」
「でもさ、君……ゴリ男って言うか、ゴリラだよね?」
「ああ!? なに言ってんの!? 俺、人間だよ!」
「いや、どう見てもゴリラだよね? ゴリラにしか見えないよね?」
「なに? ケンカ売ってんの?」
「違う違う! ケンカ売ってるとかじゃなくて、見たまんまの事実を言ってるだけだって」
「はあ!? お前、頭大丈夫か!?」
「いや……大丈夫だと思うけど……」
「じゃあさ、ゴリラって、しゃべったりするか?」
「まあ、俺の知ってるゴリラはしゃべらないね」
「だろ? でも俺は、しゃべってるよね?」
「そうだね」
「じゃあゴリラじゃないじゃん」
「うーん……そーなるのかなぁ?」
「そーなるだろ! むしろ、そーとしかならないだろ!」
「でもなぁ……」
「でもも、なにも、ないから! 冷静に考えてみな! 人間はしゃべれるだろ?」
「うん」
「じゃあゴリラは? しゃべれ……?」
「ない」
「よね?」
「うん」
「じゃあ俺は? しゃべれ……?」
「る」
「だよね?」
「うん」
「とゆーことは、俺は? 人……?」
「間」
「ほら、ね! 人間だろ?」
「だね」
「人間はしゃべれるけど、ゴリラはしゃべれない。でも俺はしゃべれる。とゆーことは?」
「うん、人間だね」
「ほら!」
「おお! なるほど、君は人間だったのか!」
「気付くの遅すぎだから!」
「いやー、てっきりゴリラかと思ったわ! ごめん、ごめん」
「まあ別にいいよ気にしなくても。そのかわり、あとでバナナ奢りだからな」
「おお! 何本でも奢ってやるよ!」