会話の研究所

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暗殺教室の作者 松井優征とデザイナー佐藤オオキの対談から学ぶ会話力

今回は漫画家の松井優征さんと、世界的に活躍されているデザイナーの佐藤オオキさんの対談から「会話力」を学ばせて頂こうと思います。

 

松井優征さんの代表作と言えば『暗殺教室』ですが、アニメや映画、実写化もされた作品ですよね。そんな暗殺教室をどのように生み出したのか? ストーリーをどのように作っているのか? などが語られています。

そして、デザイナーの佐藤オオキさんも、どのようにデザインのアイデアを生み出しているのか? その発想法や考え方が語られていました。

 

そんな2人の考え方が学べる対談でもあるのですが、やはり、それ以上に会話が上手いなって思ったので、今回は松井さんと佐藤さんの会話を学ばせてもらいましょう!

 

【対談】松井優征×佐藤オオキ

 

まずは佐藤さんが松井さんの仕事場へ向かいました。

とても大きな超高層ビルです。

 

そして、松井さんの仕事場を拝見した佐藤さんが言いました。

 

佐藤「いやー、全然印象と違いますね」

 

この発言は率直な感想ですよね。

ちなみに、この時点では、まだ本格的な対談は始まっていません。なので、いわゆる雑談に近い会話が続きます。

 

で、この発言は、「仕事場」という空間に興味を持つことによって生まれる発言なわけですが、これは話のキッカケを作るのに使いやすいので、"その場に興味を持つ" という意識を高めておくと話しやすくなりますよ。

というわけで、この発言が松井さんへのパスになり、次のような質問を引き出しました。

 

松井「どーいう感じを想像されてました?」

佐藤「なんか、もうちょっと、こう……雑然としてるかと」

松井「あははははは!」

佐藤「すいません! 失礼ですけど(笑)」

松井「いや、だいぶ片付けたほうではあるんですけどね」

佐藤「あー、そうなんですか(笑)」

松井「でもやっぱり、あのー、あれですね。綺麗にならないですね」

 

最初の質問は、佐藤さんの「印象と違う」という発言に対して、じゃあどんな印象を持っていたんだろう? という興味から生まれた質問なわけですね。

で、そのあとの佐藤さんの「雑然」という言葉から連想して、「だいぶ片付けた。でも綺麗にならない」というエピソードへと繋がったわけです。

 

そして、仕事場という空間のあとは、すかさず窓から見える景色に興味を持ちました。

 

佐藤「てゆーか、景色すごくないですか?」

松井「そーですねぇ。都庁から第二庁舎、パークタワーホテルまで、みんな同じ方が設計されてるじゃないですか」

佐藤「丹下健三ビューですね」

松井「はい、そうですね。全然そのー、系列も違うのに、同じデザインに組み込んでしまう、このエゴっぽさ。ヘッヘッヘ(笑)」

 

佐藤さんは窓から見える景色に対する感想を言ったわけですが、これは松井さんへのパスであると同時に、褒め言葉でもあるわけですね。

人間というのは基本的に認められたい生き物なので、自分のこだわりなどを認められると、ついつい嬉しくなっちゃうわけです。なので、会話の際は、相手のこだわっていそうな物事がなんなのかに注目し、その部分に興味を持って質問してみると、わりと盛り上がりやすくなりますよ。

 

それと、ここでは「丹下健三ビューですね」という返しをしていますが、この返しによって「あ、この人、わかってくれてる!」という感じで、松井さんも嬉しくなったのだと思います。ちなみに、この返しは「壁パス」ですね。

 

続いて佐藤さんは、デスクの上に置いてある銃(モデルガン)に興味を持ちました。

 

佐藤「ちょっと、いいですか?」

松井「はい」

佐藤「なんかあのー、普通にタブレットの隣にゴソッと置いてある……(笑)」

松井「あっははははは!」

佐藤「銃ですか?」

松井「はい(笑)」

佐藤「これはやっぱり、これ見ながら描くみたいな、そーゆうことなんですか?」

松井「だいぶそのー……」

 そう言いながら銃を手に取る松井さん。

松井「銃そのものというよりは、銃を持ってる、この手とかですね」

佐藤「はい」

松井「この手の形って、やっぱりそのー、ちゃんと持ってみないと分からないんで」

 ここで、銃を佐藤さんに手渡す。

佐藤「へえ〜! あ、重い!」

松井「そう、重量感とかも含めて」

佐藤「ああ〜そっか、重さによっても手の感じって変わるんですよね」

 

漫画に出てくる同じ銃を発見した佐藤さんは、まず、その銃そのものに興味を持ちました。そしてすかさず、「やっぱ、実物を見ながら絵を描いてるのかな?」という絵の描き方に興味を持ったわけです。で、それを確認するように質問したってわけですね。

それと、銃を手に取ったときの感想を佐藤さんは述べていますが、これも松井さんに対するパスになっていて、そのあとの「そう、重量感とかも含めて」という返しに繋がっています。

 

このように、"五感で感じたこと伝える" っていうのは、会話をするうえで非常に大事な要素の1つなので、なにか感じたことがあったときは、なるべく抑え込まずに伝えるようにしましょう!

あ、もちろん、明らかに失礼であろう発言は控えた方がいいとは思うんですけど、かといって空気を読みすぎるのも、あまりよくありません。まあ、そのへんの塩梅は経験で養うしかないですけどね。

 

とりあえず今言えることは、失敗を恐れないことです!

傷つくことを恐れて逃げるのは簡単です。でも傷つくことや失敗を恐れていたら、いつまで経っても成長しません。そうやって逃げているうちに時間はどんどん過ぎていき、気付いたときには10年、20年と経ってしまうのです。

そして、「ああ、あの時、思い切って挑戦しておけば良かったなぁ……」なんて思っても、過ぎた時間は取り戻せません。

てゆーか、たとえ傷ついたとしても、そんな傷いつかは癒えます。なので、果敢に挑戦していきましょーよ!

 

ってなわけで、少し話がそれてしまいましたが戻ります。

今度はデスクに貼られていた「キャラクターの設定表」へと話題が移りました。

 

佐藤「ああ〜、携帯電話の機種とか色も! おもしろい!」

松井「まあ(笑)」

佐藤「へえ〜、ここまで決めるんですね!」

松井「いや、もっと欲を言えば、携帯の裏のデコレーションとか、そーいうとこまで設定したかったんですけど」

佐藤「あっ! でも書いてある書いてある! カバーゼブラって!」

松井「えっへへへ(笑)」

佐藤「へえ〜、やっぱり何が書いてあるか分かんないすね」

松井「あははははは!」

 

デスクに貼られていたキャラクターの設定表を見た佐藤さんは「どんなことが書いてあるんだろう?」と興味を持ちます。そして、「ああ、携帯電話の機種とか色も決めてるんだ! へえ〜、おもしろいな〜!」という感じで感想を言ったわけですね。

で、その感想が松井さんへのパスにもなっていて、そのパスが松井さんの「本当はもっとこだわりたかった」という想いを引き出しました。

 

そして佐藤さんは、さらにキャラクターの設定表に興味を持ちます。

 

佐藤「カッパ62。忍者頭布65……」

松井「60番とか書いてあるのが、そのー、スクリーントーンというやつで」

佐藤「はあはあはあはあ」

松井「あのー、漫画に色をつけるやつ」

佐藤「はいはいはい、聞いたことあります」

松井「えーっと、貼るやつですね」

佐藤「シールみたいなやつですよね?」

松井「そうです、そうです」

 

先ほどの携帯の機種や色の他に、『カッパ62』『忍者頭布65』という数字を発見した佐藤さん。おそらく、こう質問しようと思ったのでしょう。「この数字は一体なんなんですか?」と。

で、そのパスを感じ取った松井さんは、すかさず説明したわけです。いうなれば、パスを先読みして前方へ走り込んだって感じですかね。

 

続いて佐藤さんは、さらなるパスを出しました。

 

佐藤「松井さんは、どこへ座ってらっしゃるんですか?」

松井「自分はここです」

佐藤「ああ、こっちなんですね」

 

この質問は、デスクがたくさんあるけど、松井さんの席はどこなんだろう? という興味から生まれた質問ですね。

そして今度は、松井さんの座っている椅子に興味が移ります。

 

佐藤「ああ、やっぱりアーロンチェアですね」

松井「アーロンチェアなんですよ」

佐藤「あれですよね、何巻だったかなぁ……8巻か9巻で、悪者が座ってるシーンてあるじゃないですか?」

松井「はいはいはい」

佐藤「でもあれ、ここクロムでしたよね?」

松井「そうですね」

 

まず佐藤さんは椅子のデザインに興味を持ったわけですけど、それは漫画に出てきた椅子と同じデザインだったからです。だから「ああ、やっぱり同じデザインの椅子なんですね」という感想が生まれました。

これは、佐藤さんがデザイナーであるがゆえに、やはり椅子などのデザインが気になってしまうのでしょうね。

で、さらに、「あれ? でも確か漫画では、この部分がクロムだったよな?」という疑問が湧き、それを確かめるべく質問したわけです。

そして、ここから会話が展開されていたと思うんですが、その部分はカットされていたので分かりません。なので次に行きます。

 

というわけで、ここからは、椅子に座っての本格的な対談が始まりました。

 

佐藤「暗殺教室、読みました」

松井「あ、ありがとうございます!」

佐藤「もうタイトルからして、すごいと思ったんですよ」

松井「(笑)」

佐藤「で、最初の先生に向かって、生徒が全員『起立』って立ち上がって銃を向けてる。あれって、どこからそーいう……発想したというか、どーゆったキッカケで暗殺教室、あの設定ですよね」

 

ここでは改めて「暗殺教室を読みました」ということを伝えるところから始まり、そしてまず感想を伝えました。

そして、あらかじめ用意していたであろう質問をぶつけたわけですが、ここで注目したいのが「なぜ、その質問が生まれたのか?」です。

まあおそらく、冒頭の生徒全員が教師に向かって銃を構える、というシーンに衝撃を受けたのだと思います。

で、そこから「なんでこんな設定を思いつけるんだろう?」という "作者の発想" に興味を持ったわけです。それが最初の佐藤さんの質問になり、松井さんへのパスになりました。

そのパスをもらった松井さんは次のように答えます。

 

松井「あのー、多分ホントに、最初だけは絶対ひらめきだと思うんですよ。そのー、デザインもそーだと思うんですけど」

佐藤「うんうんうんうん」

松井「最初に生徒が、ページぺらっとめくったら、一斉に起立して銃構えて先生狙ってたら面白くね!? っていう、その……」

佐藤「その1枚の絵から!?」

松井「そーです、そーです」

 

暗殺教室の一番最初の発想を語っているわけですが、この時に松井さんは少し表現に詰まる部分があります。しかし、ここで佐藤さんは「その1枚の絵から!?」とアシストしました。

このように相手が「えーっと、なんて言えばいいんだろうな……」という感じで表現に詰まった場合は、こちらが代わりに「要するに〇〇ってこと?」みたいなふうに言葉をアシストしてあげると、会話がスムーズになりやすいですね。

そんなわけで、会話は続きました。

 

松井「じゃあそれを、連載漫画として成立させるにはどーしたらいいかって思ったら、あのー、当然 次の瞬間 殺せちゃったら、まったく意味が無いじゃないですか」

佐藤「うんうん」

松井「そうすると、ずっと避け続けなきゃいけないから、そーしたらもう超スピードか超能力か、どっちかしかないと。で、えーと、じゃあその超スピードで避け続ける、バラバラバラバラやってる、そんな教室が隣にあったら、もう気になって授業にならないんですよ。その、あっという間にみんなに広まっちゃって大問題になる」

佐藤「ですね」

松井「じゃあ、どーすればいいかっていったら、離れの校舎にすればいいと」

佐藤「はははは! なるほど!」

松井「で、離れの校舎にするにはどーすればいいかっていったら、落ちこぼれにすればいいと。わりとそのー、一番最初の絵さえ出来れば、あとはもう、あのー、繋がってくるんですね」

 

この部分では、漫画のアイデアを形にするための思考プロセスが語られていたわけですが、この考え方は本当に勉強になるなって思いました。

それと佐藤さんの相槌もいいですね。「うんうん」とか「ですね」とかの相槌があることによって、松井さんも話しやすくなっているのだと思います。

 

で、この話が佐藤さんへのパスにもなっていて、そこからイメージを広げた佐藤さんは、次のような質問をしました。

 

佐藤「でも、そのシーンの段階では、そこまでの積(せき)は出来てないわけですよね?」

 

この質問は先ほどの「一番最初の絵さえあれば、あとは繋がっていく」という松井さんの話に対して、「なるほど、そーやって設定が出来たのか。でも、かといって、その段階で全てのストーリーが完成されたわけじゃないよね?」という感じの感想が浮かんできたわけです。

つまり、ストーリーの大枠がいつ出来たのか? という部分に興味を持ったわけですね。で、その感想というか、疑問と興味を確認する形で、松井さんに投げたってわけです。

そして松井さんは、こう答えました。

 

松井「いや、でもほぼほぼ、そこから一晩くらいで全部」

佐藤「一晩で! まさかの(笑)」

松井「はは(笑)」

佐藤「いやでも、アイデアってそーいうもんですよね」

松井「そーいうもんですね」

 

そーいうもんらしいです。

 

というわけで、このあとも対談は続くのですが、今回はここまでにしておきます。

では。